知っておくと安心！人生において破綻をきたす要因とは？

先生、この患者さんは、今回、なんで再発したの？

はい、おそらく、薬の服薬を自己中断したからです。

ふむふむ。しかし、それは最終的にそうなったのであって、その前に何か、きっかけがあったはずじゃよ。

まだ、症状が安定しないので、疎通が十分取れませんが、本人や家族に聞いても、特に何もなかったと聞いています。

ふむふむ。それが、あらかじめわかっていたら、再発には至らなかったかもしれないぞ。

え？

本人も周りも、わからなくて、対処しようがないから、気づかないうちに再発するのじゃよ。

そうなんですか？

だから、本人や周りに聞いただけで、発症や再発要因が探れないようでは、三流以下の精神科医にしかなれないよ。

がーん。

患者さんの、生活背景や、これまで歩んできた人生から、探るんじゃ。

生活、人生、ですか？

生活臨床というんじゃよ。

はい、勉強しておきます。

まあ、系統だったきちんとした学問ではなく、実践論だから。

でも、実践の方が、臨床には役立ちますよね。

まあ、そうじゃね。

とりあえず、ヒントをください。

キーワードは、「イロ」「カネ」「メイヨ」じゃ。

え？

イロは、色事、恋愛とか結婚など、異性関係のことじゃよ。同性同士でもいいぞ。とにかく恋だの愛だの、性的なことじゃ。

ふむふむ。確かに、失恋や離婚が、発症や再発のきっかけになることはありますね。

カネは、その通り、お金じゃ。つまり、経済的な破綻じゃよ。

ふむふむ。確かに、現代では、お金がないと、食べることや、住むところなど、生命に危機をきたしますね。

そして、メイヨは名誉、つまり、プライドや自尊心じゃ。

確かに、馬鹿にされたり、侮辱されたりすると、不安定になる方がいますね。

大体、その３つが、誰にでも共通する、人生に破綻をきたす要因じゃ。

なるほど！

ただし、人によって、どれに強く反応して崩れやすいかは、違うから、その人のパターンを、見極める努力をするんじゃ。

患者さんとは、長い付き合いになることも多いですから、初発までの要因と、再発要因をよく分析して、共有しておくことが大事ですね。

まあ、参考にしてみてね。

はい、あとは、もう少し自分で勉強します。ありがとうございました!

大魔神先生、昇進をきっかけに、うつになった患者さんを担当しているのですが。

ああ、それは、昇進うつ、だね。

え？でも、昇進って、出世だから、おめでたいことじゃないですか？

そうなんだけど、おめでたいからといって、ストレスにならないわけじゃないよ。

へ？

他にも、結婚うつとか、出産うつとか、新築うつとか、おめでたいことの後に起こるうつは、よくあるよ。

えー！てっきり、イロ、カネ、メイヨは、良くない状況になった時だけのことかと思ってました。

イロについて言えば、恋人ができるとか、結婚とか、一見おめでたいことに見えるけど、結構エネルギーを使うよね？

確かに。

恋は盲目だから、興奮して乗り切れるけど、実は、結構、精神的に疲弊するんだよ。とにかく、性のエネルギーは、計り知れない力を持っているからね。

なるほど。

結婚もそうだよね。マリッジブルーって言うでしょ？エネルギーをもすごく使う。

そうですね。

だから、イロ、カネ、メイヨは、良いことも、悪いことも、どちらでも要因となりうる。

そうかー。それは盲点だったな。

何にしても、自分の心が揺さぶられて、精神エネルギーを消費するときに、脳がバランスを崩して何かの不調を起こしやすい。

では、人それぞれ、どの要因に反応するかは、違うんですね。

そう。イロ、カネ、メイヨ以外にも、その人独自の要因があることが多いよ。ある人は健康問題、ある人は時事問題、とかね。

そうか、自分が、何に動揺しやすいか、知っておくことが大事ですね。

けど、どんな揺さぶりからも、結局は逃げられないからね。

確かに、反応が怖いからといって、カゴの中で一生を過ごすわけにはいきませんね。

まずは、その人が何に反応して動揺しやすいかを、知っておく。

はい。けど、知っておくだけでは、完全には防げませんよね。

それでいいんだよ。発症や再発が決して悪いことばかりではないから。

確かに、それをきっかけに、気づくことも色々ありますよね。

そういうこと。まあ、参考にしてみてね。

はい！ありがとうございました！

魔女医、心が揺さぶられることって、その人にとって、どうしてそんなに影響が出るんですかね？

うん？それはね、その人が、自分の人生において、かなり重要に感じていることだからよ。

え？そうなんですか？

そうよ。意識していても、意識してなくても。

揺さぶられて、悪影響が出るぐらいなら、そのことと関わらない方が良さそうですけど。

じゃあ、例えば、あなたは、イロで動揺する人だとして、人生に恋愛や結婚はいらなかった？

うっ。た、たしかに。

だから、たとえ、患者さんの発症、再発要因がわかっても、それをその人の人生から、取り上げることはできないわよね

それはそうです。

まあ、そういうこと。

えーどういうこと？

つまり、人は、本当は自分が大事にしたいこととか、願望していることに反応して、動揺が起きるのよ。

えー！そうなんですか？

だって、そうでしょ。興味や関心のないことだったら、別にどうなってもいいじゃない。

まあ、そうですけど。

だから、患者さんが、急性期で一番精神状態が悪いときから、その人の本当に望んでいる状況に、希望持たせてあげないと。

希望？けど、そのとき、実現可能なことと、不可能なことがありますよね

それは、そのとき実現可能かどうかは、関係ないのよ。望む状況になるために、今どうするべきかを、助言してあげればいい。

なるほど。仮に、生活が破綻して、人生に絶望していたとしても、むしろ、ちゃんと戻れる方法を声がけして、希望を持ってもらうんですね。

そういう時が、むしろ、人生を立て直すチャンスなのよ。

たしかに。

何に、反応して、動揺したかがわかれば、何を大事に思っているかも、見えてくる。

そうですね。

その上で、安定を取り戻したときに、それを、その後の人生で、本当に望むかどうかは、考えていけばいい。

絶望の淵にいる時でも、生きる希望を捨てないような、働きかけが大事なんですね。

そう、そして、それは、その人が何を大事に生きていたかということが、参考になる。

そうかー。自分が大事に思っていることだからこそ、自分の中のエネルギーがうごめいて、動揺するのかー。

それに気づかないと、人生で、何度も何度も、同じパターンを繰り返すことになるわよ。

再発、再燃ってことですね。

病状なら、そうだけど、別に病的レベルでない、健康な人にも、同じようなことは、当然起こるわよ。

結局、日常生活や、社会機能に、支障をきたすか、きたさないかの、機能障害が起こるかどうかで、病的かどうかを判断しますが、病的だろうがなかろうが、みんな、肉体と精神を持っているのですから、人類に共通することですよね。

そういうこと。だから、破綻や絶望を、悪いものとばかりとらえないで、その後の自分の人生をよりよく生きていくための、気づきのチャンスととらえれば、なんてことないわ。

それなら、誰にでも、起こる可能性はあることですし、みんなそうだと思えば、怖くないですね。

泳ぎ方を知っていて、海に飛び込んで溺れたなら、自分で、戻ってこれるけど、泳ぎ方を知らなくて、飛び込んだ人は、誰かに助けてもらう必要があるだけよ。

うん？

つまり、泳ぎ方を知らない人を、助けに行って、泳ぎ方を教えたり、救助したりするのが、あなたの役目なの。

ああ！そういうことか！でも、私泳げませんよ。

例え話よ。まったくあなたは、鈍いわね。

ああ、そういうことですね！

だから、人生に破綻をきたして、絶望の淵にいる、海の底に沈みそうな人に、希望を持たせて、救っていかないといけないのよ、あなたは。

責任重大だなー！

大丈夫、大丈夫！今は、とにかく、まず自分が溺れないように、泳ぎ方を早く覚えてね。

はい！わかりました。まず、自分の強化ですね！ありがとうございました！