相手も自分も傷つけずに恋愛感情などの陽性転移を扱う方法とは?
恋愛において、
両思いなら話は早いけど、
片思いの場合、
どう決着をつけるか?
お互いに悩ましい、
展開になることは、
ありますよね。
振られたら、
いさぎよく、
あきらめる。
しかし、
振られ方によっては、
その後ずっとその傷を、
引きずってしまうかも、
しれません。
そうかと言って、
告白された方も、
好意もないのに、
情けだけで、
付き合ってしまうなら、
それはそれで、
悲惨な結末になるかもしれません。
いや、案外、
うまくいくこともあるでしょう。
けど、
どうしても、
好意に答えられない、
状況もありますよね。
そんな時に、
どうやったら、
お互い傷つかないで済むか?
今回は、
そのことについて、
お話してみたいと、
おもいますので、
興味があれば、
ぜひ最後まで、
お付き合いくださいませ。
駆け出しの頃の悩み
「私」が、
まだ駆け出しの、
精神科医だったころ、
自分と同世代以下の、
男性の患者さんが、
苦手でした。
嫌いというわけではなく、
自分の中の問題が、
反映されていた、
だけのことなのです。
しかし、
患者さんを自分から、
選んで担当するわけには、
いきませんし、
なんとか克服しよう、
そう決意して、
治療に取り組んでしました。
告白され動揺する
ある日、
男性患者さんから、
診察中に、
愛の告白をされ、
動揺し、
次から診察が、
うまくできるかどうか、
悩んでいました。
それまでも、
何人も、
男性患者さんは、
担当していましたが、
初めての出来事でした。
そう珍しくはない、
ことなのですが、
いざ自分の身に、
起こってみると、
とんでもなく、
心がかき乱されました。
良いにせよ、
悪いにせよ、
色事の持つ、
エネルギーというのは、
計り知れないものなのです。
精神科医としての自信を無くす
精神分析的には、
治療者との間に、
再現された、
陽性転移という、
抑圧された感情の、
表出として、
とらえられます。
これを
治療のための、
素材として、
淡々と扱うべき、
ということは、
わかっているけれど、
まだ駆け出しで、
分析もきちんと学んでおらず、
下手に扱うのも危険だし、
と考え込みました。
一体、
どういう対応をしたら、
患者さんを、
傷つけず、
その後もいい関係を、
保っていけるのか?
今後、
こういうことが、
何度も何度も、
起こる可能性があるなら、
私の精神は持つのだろうか?
精神科医を、
続けていく自信を、
失いかけていました。
先輩医師からのアドバイス
こういう時は、
先輩医師に、
相談しようと思い立ち、
ベテランのS魔神先生に、
聞いてみました。
あのー、この前、診察の時に、男性患者さんから、愛の告白をされてしまって。
私
えー?先生、初めてなの?今までよくされなかったね?
S魔神先生
え?それは、どういう意味でしょうか?
私
いや、もうとっくにその洗礼は受けていたと思っていたよ。
S魔神先生
つまり、私に女性的な魅力が足りないということでしょうか?
私
いやいや、そこまで言ってないよ。
S魔神先生
いっそ、頭を坊主にして、女性性を完全に消し去ってしまいたい気持ちです。
私
おいおい、早まっちゃいけないよ。そんなことしたら、誰も患者さんが寄ってこなくなるぞ。
S魔神先生
S魔神先生は、告白された経験はありますか?
私
そりゃー、僕は色男だから、たくさんあったよ。いやー、若い時は、色々と、大変で、困った、困った。
S魔神先生
そういう時は、どうしてたんですか?
私
それはね、美人な患者さんもいたからね。我慢するのが大変だったよ。
S魔神先生
・・・男の先生に聞くのが間違ってました。
私
あー、すまん、すまん。でも、僕にとっては、患者さんの中で、オンリーワンを作ってはいけないから、主治医患者関係を続ける以上は、本当の恋愛関係になってはいけないよね。
S魔神先生
そうですよね。つまり、いくら、治療上起こっている、陽性転移としての恋愛感情であっても、その気持ちに応えられない相手からの、愛の告白に、どう対応すれば、いいんですかね?
私
何も、治療上だけじゃなくても、好きじゃない相手から告白された場合でも、同じだと思うけどね、僕は。
S魔神先生
え?
私
そんなに、分析とか、複雑に難しく考えなくても、治療時間は限られているんだし、本格的に精神分析治療をやっているわけでもないんだからさ。
S魔神先生
確かに。素材として扱うと言っても、今の私には、なかなか難しそうです。
私
だから、とりあえずの、実践的な、救済、対処方法は知っておいた方がいいよね。
S魔神先生
はい、それを知りたいです。
私
お互いに傷つかない方法
主治医患者関係における、信頼関係を深めていく中で、もし患者さんから、愛の告白をされた時に、決め台詞を決めておくといいんだよ。
S魔神先生
例えば?
私
僕はね、「〇〇さん、男の趣味いいねー」って返すよ。
S魔神先生
へ?
私
だって、陽性転移だろうが、本物の恋愛感情だろうが、自分に好意を持ってくれたとことは確かだから、嬉しいし、ありがたいよね?
S魔神先生
ま、まあ、そうですけど。
私
異性として魅力を感じてくれたわけだよ。わっはっはっ。
S魔神先生
けど、それって、誤解されないでしょうか?
私
まず、その気持ちに感謝をして、それから、限界設定は告げればいい。主治医患者関係でいる以上は、恋愛関係にはなれないんだよ、と。
S魔神先生
そうですよね。
私
でも、自分としては、恋愛感情には応えられないけど、できれば、これからも、いい主治医患者関係を、保っていきたいと。
S魔神先生
患者さんによっては、主治医を理想化して、その期待に応えてくれないとわかった後の、こき下ろしがありますよね?
私
そうだね。それは、大変だよ。でもしょうがないでしょ?だって、恋愛感情を持ってしまう患者さん全員と、恋愛関係になるわけにはいかないから。
S魔神先生
恋愛はできないけど、それでもいいなら、見捨てないし、これからも、回復に向かっていい関係を保っていこう、ということを伝えればいいんですかね?
私
まあ、僕の場合は、大体それで、うまくやってきたけどね。
S魔神先生
どんな反応も大事に扱う
大事なのは、どんな陽性転移、陰性転移も、大事に扱うってことじゃないかな?
S魔神先生
どんな転移も、ですね?ついつい、逆転移を起こしてしまいます。今回も、陰性感情を抱いてしまいました。それが、精神科医として、罪悪感でした。
私
いいんだよ。我々も、ロボットじゃないんだから。そんな、何にも動揺しない、鉄仮面みたいにはいかないよ。
S魔神先生
そうですよね。
私
できれば、お互い、無駄なエネルギーを消費せず、傷つかず、疲弊せず、やっていきたい。けど、ぶつかり合うべきところは仕方ないとして、それでも向き合っていきたいよね。
S魔神先生
そうですね。
私
だから、どんな反応にも、極力相手が傷つかずに、自分にも優しい方法で、その場をまとめるスキルが大事になるかな。
S魔神先生
なるほど。
私
なるべく、緊張感を持ち込まないことだよ。病気の質にもよるけど、通じる場合には、ユーモアや冗談も使えばいいし。例え、どんな感情でも、なるべく肯定的に褒める。
S魔神先生
なかなか、難しそうですが、まずは、次回から、告白された時は、「〇〇さん、女の趣味いいねー、さすが!ありがとう」と言ってみます。
私
そう言われたら、相手も悪い気はしないし、無下にはされなかったという気持ちになるでしょ?
S魔神先生
そうですね。まずは、陽性転移も、陰性転移も、拒絶せずに、受け止めることが大事ですね。
私
まあ、それが、精神科医の腕の見せ所ってもんよ。まあ、試してみて。
S魔神先生
はい、動揺したら、その都度、切り返すいい言葉を考えて、貯めていきます。
私
苦手や動揺が減る
その後、私は、
そういう心がけで、
診療に臨むようになり、
動揺が減りました。
心のどこかで、
自意識過剰に、
男性患者さんから、
恋愛感情を持たれたら、
厄介だという、
まだ起きてもいない現象に、
怯えていたのかも、
しれません。
そういう、
自分の勝手な、
陰性感情の逆転移が、
より苦手意識を、
強くさせていたのかも、
しれません。
不思議なことに、
いや悲しいことに?
その後一度も、
愛の告白は、
されていません。
それどころか、
患者さんたちは、
私を男とも女とも思わずに、
なんでも相談してきます。
まあ、治療には、
時として、
父性も母性も、
必要なので、
それはそれで、
良いのですが。
妙な医者っぽさだけが、
身についてきて、
もう全く恋愛対象としては、
みられなくなりました。
医者としては、
成熟を喜ぶべきでしょうが、
女性としては、
嘆かわしいことです(笑)
あの時に、
大事なことを教えてくれた、
今は亡きS魔神先生には、
感謝の気持ちで、
いっぱいです。
きっと、
あの頃の未熟な私でも、
精神科医を続けて欲しくて、
動揺しない魔法を、
かけてくれたのでしょう。
結局一度も、
「〇〇さん、女の趣味いいねー」
は使ってないのですが、
その言葉自体を知っていて、
備えがあるだけでも、
心強いものでした。
今では、
他にもいろんな、
言葉の引き出しは、
増えたと思いますが、
この言葉の持つ雰囲気を、
忘れないようにしています。
1人で苦悩し続けても、
答えが出ない時には、
経験者の知恵を、
遠慮なく借りることが、
解決の近道なのですね。
S魔神先生、
ありがとうございました!
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、
恋愛感情を、
例にとってみましたが、
S魔神先生の
「〇〇さん、男の趣味いいねー」は、
相手も自分も傷つけないな、
と感じた言葉でした。
それからは、
そういう言葉遣いを、
意識して、
自分の辞書に、
増やしていったような、
気がします。
それでも、
お互い人間なので、
悪影響を与え合うことは、
ゼロではありません。
けど、
それを恐れていては、
何も始まらない、
ということもあるので、
反省を繰り返しながらも、
人と人は、
向き合っていくのだな、
と感じています。
自分にとって、
都合のよくないことを、
言われた時でも、
動揺せずに、
感謝とユーモアを持って、
切り返すことができる。
そういう余裕のある、
S魔神先生のように、
なれたらいいなと、
思います。
今回は、
1つの例でしたが、
いつも同じような、
人間関係のパターンで、
動揺を繰り返していて、
疲弊していることがあれば、
どういう言葉で、
切り返しをするのが最適か、
考える参考に、
してみてくださいね。
最後まで、
お付き合いいただきまして、
ありがとうございました!