順調なはずの人生で、「これでいい」と自分に言い聞かせ続けた男が、停滞を抜け出す自信を再駆動するには?
「これでいい」と繰り返すその言葉に、どこか力みがある。本当は満ちていないのに、納得したふりをしている。くすぶりのありかを探ることから、停滞は動き出す。
「これでいい」そう自分に言い聞かせる。仕事は悪くない。給料も安定している。家族もいる。健康にも問題はない。何も間違っていない。むしろ、順調なはずだ。なのに、どこか満たされない。その感覚を「贅沢な悩み」だと片付けて、もう一度自分に言う。「これでいい」と。
でも本当は、その言葉には力みがある。本当に「いい」と思っているなら、わざわざ言い聞かせる必要はない。言い聞かせているということは、どこかで納得していないということだ。本当は、違和感がある。何かが足りない。何かが燃えていない。そう感じているのに、それを認めないようにしている。
順調であることと、満ちていることは、違う。順調というのは、客観的な指標の話だ。収入、役職、家族構成、社会的な評価。そういう外側の条件が整っていれば、それは「順調」と呼ばれる。だが、満ちているかどうかは、内側の話だ。自分の中で何かが燃えているか。生きている実感があるか。自分がやっていることに、心から納得しているか。その内側の充実感は、外側の条件とは必ずしも一致しない。
むしろ、順調だからこそ、違和感を認めにくくなる。「何も問題がないのに、不満を言うのは甘えだ」と思ってしまう。「これ以上何を望むのか」と自分を責めてしまう。そうやって、自分の中にあるくすぶりを、無理やり押し込めていく。
だが、そのくすぶりは、単なるわがままではない。それは、あなたの中にまだ使われていないポテンシャルが残っている証拠だ。本当はもっとできるはずなのに、やっていない。本当はもっと燃えたいのに、燃やしていない。そういう不完全燃焼の感覚が、違和感として現れている。
ポテンシャルを感じているのに、それを出せないでいる。それは能力の問題ではない。むしろ、恐怖の問題だ。今の安定を壊すのが怖い。失敗するのが怖い。周りからどう思われるかが怖い。だから、現状維持を選ぶ。そして「これでいい」と自分を納得させようとする。
だが、納得していないものを納得したふりをし続けると、人は少しずつ枯れていく。エネルギーが内側で腐っていく。やがて、何に対しても意欲が湧かなくなる。趣味も、人間関係も、すべてが色褪せて見える。それは鬱ではない。ただ、自分を裏切り続けた結果だ。
「これでいい」という言葉の裏に隠れているのは、実は「これ以上を望んではいけない」という禁止である。
その禁止は、誰が課したのか。親か。社会か。それとも、自分自身か。いずれにせよ、その禁止に従っている限り、あなたは動けない。停滞は、外側の状況が作るのではない。内側の禁止が作るのだ。
では、どうすればいいのか。まず必要なのは、「これでいい」と言い聞かせるのをやめることだ。無理に納得しようとしない。違和感があるなら、それを認める。満たされていないなら、それを認める。くすぶっているなら、それを認める。認めたからといって、すぐに行動する必要はない。ただ、自分に嘘をつかない。それだけでいい。
次に必要なのは、くすぶりのありかを探ることだ。何が燃えていないのか。どこが不完全燃焼なのか。それを特定する。仕事か。人間関係か。創作か。挑戦か。自己表現か。その答えは、人によって違う。だから、自分の内側を丁寧に見ていく必要がある。
くすぶりのありかが見えてきたら、次に問うべきは「なぜ燃やさないのか」だ。能力がないからか。時間がないからか。お金がないからか。それとも、怖いからか。大抵の場合、本当の理由は最後の「怖いから」だ。それ以外の理由は、後付けである。
怖さを消す必要はない。怖さを感じながらも、少しずつ燃やしてみる。いきなり大きく燃やす必要はない。小さく、試しに、燃やしてみる。その時に大事なのは、結果ではなく、燃やしたという事実そのものだ。
燃やしてみると、何かが動き出す。それは外側の変化ではなく、内側の変化だ。自分の中で何かが息を吹き返す。生きている実感が戻ってくる。その感覚こそが、停滞を抜け出す最初の一歩になる。
「これでいい」と言い聞かせる必要がなくなった時、あなたはもう停滞していない。
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