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楽しそうに過ごす同年代を見て、何かが自分だけ欠けている気がした男が、誰にも負けない情熱を取り戻すには?

同世代が笑いながら趣味の話をする横で、自分だけが何も語れない。その欠乏感は、本当に何かが足りないのか。それとも、持て余したエネルギーが行き場を失っているだけなのか。

宇谷悦子

この記事を書いた人

宇谷悦子

心理翻訳家 | 精神科医

精神科医として20年以上、多くの方の心に向き合ってきた経験から、40代以降の男性が抱える「言葉にならない違和感」に輪郭を与え、自信の再駆動を支援しています。

  • 医師免許・精神保健指定医
  • 臨床経験20年以上
  • 40代男性の自己理解・自信回復を支援
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Published 2026.08.16 こころの違和感

カフェで隣の席に座っていた同年代の男たちが、楽しそうに笑っていた。趣味の話をしている。キャンプがどうとか、最近買ったギアがどうとか、次の週末の予定がどうとか。別に聞き耳を立てていたわけではない。ただ、その声のトーンが、妙に耳に残った。

生き生きとしている。それが、痛かった。

自分にはそういうものがない。仕事の話なら少しはできる。でも、目を輝かせて語れるような何かは、ない。趣味を聞かれても答えに詰まる。休日に何をしているかと聞かれても、特に何も、としか言えない。そして、その瞬間に感じる。自分には、何かが欠けている。

その「欠けている感覚」は、ただの事実確認ではない。もっと深いところで、自分を責めている。他の人には当たり前にあるものが、自分にはない。だから自分はダメなのだ。人生を楽しめていないのだ。情熱を持てない人間なのだ。そうやって、欠落を数え上げては、自分を削っていく。

だが、ここで問わなければならないことがある。本当に、あなたには何も「ない」のか。それとも、あると気づいていないだけなのか。

欠乏と、欠乏感は、違う。欠乏というのは、実際に何かが足りない状態だ。だが、欠乏感というのは、本当は欲しいのに手に入っていないと感じる「苦しさ」のことである。つまり、欠乏感があるということは、裏を返せば、あなたの中に「欲しい」という欲望がまだ残っているということだ。

同年代が楽しそうに過ごしているのを見て、羨ましいと思った。その感情そのものが、答えを含んでいる。羨ましいということは、自分もそうありたいと思っているということだ。情熱を持ちたい。何かに夢中になりたい。生き生きと過ごしたい。そう望んでいる自分が、まだいる。

もしあなたが本当に何も望んでいなければ、他人が楽しそうにしていても何も感じない。無関心でいられる。だが、あなたは感じた。胸が痛んだ。ということは、あなたの内側には、まだ使われていないエネルギーがある。ただ、それが行き場を失って、くすぶっているだけだ。

情熱がない、のではない。情熱を向ける先が、見つかっていないだけだ。

多くの人は、ここを逆に捉えている。「自分には情熱がないから、何にも夢中になれない」と思っている。だが、それは因果が逆だ。情熱は、最初から持っているものではない。何かに触れた瞬間に、内側から湧き出してくるものだ。

たとえば、ある日突然ギターを手に取った人が、気づけば毎晩練習している。たとえば、ふとしたきっかけで山に登った人が、次の週末も、その次の週末も山を目指す。たとえば、何気なく読んだ一冊の本が、その人の人生を変える。情熱は、そうやって「出会い」の中で点火される。

だが、その出会いを待っているだけでは、何も起きない。出会いは、動いた先にしかない。部屋の中で「自分には情熱がない」と嘆いていても、何も変わらない。外に出て、何かに触れてみる。興味がなくても、とりあえずやってみる。すぐに飽きてもいい。つまらなくてもいい。大事なのは、触れ続けることだ。

その過程で、ふと「これかもしれない」と思う瞬間が来る。それは、派手な感動ではないかもしれない。ただ、少しだけ、心が動く。その小さな動きを、見逃さないこと。それが、情熱の種になる。

もうひとつ、大事なことがある。情熱というのは、他人と比べるものではない。キャンプに夢中な人もいれば、読書に夢中な人もいる。ギターに夢中な人もいれば、料理に夢中な人もいる。そのどれが優れているか、などという序列はない。大事なのは、自分がそれに触れた時に、何を感じるかだ。

だから、他人が楽しそうにしているものを、そのまま真似する必要はない。それで楽しくなるなら、それでいい。だが、無理に合わせても、どこか空虚なままだ。自分の中で、本当に「これだ」と思えるものを探す。それは時間がかかるかもしれない。何度も空振りするかもしれない。それでもいい。

情熱は、誰かに見せるためのものではない。自分が生きている実感を取り戻すための、エネルギーの出口だ。

そして、最後にもうひとつ。情熱を持つためには、ある種の「信じる力」が必要だ。自分にも、夢中になれるものがあるはずだ。自分にも、心が動くものがあるはずだ。その前提を、まず信じること。もし最初から「どうせ自分には無理だ」と思っていれば、どんなものに触れても、心は動かない。

自分の中に眠っているエネルギーを信じる。それがまだ、行き場を見つけていないだけだと認める。そして、その出口を探しに行く。それが、情熱を取り戻す最初の一歩だ。

欠けているのではない。ただ、まだ点火されていないだけだ。

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