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明日も仕事なのに、おすすめ動画を止められない男が、自分を本当に満たすには?

夜中の2時。また動画を見ている。明日も仕事なのに、指は止まらない。その刹那的な快楽の奥に隠れた本当の渇きを、あなたはまだ見ていない。

宇谷悦子

この記事を書いた人

宇谷悦子

心理翻訳家 | 精神科医

精神科医として20年以上、多くの方の心に向き合ってきた経験から、40代以降の男性が抱える「言葉にならない違和感」に輪郭を与え、自信の再駆動を支援しています。

  • 医師免許・精神保健指定医
  • 臨床経験20年以上
  • 40代男性の自己理解・自信回復を支援
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Published 2026.08.17 こころの違和感

夜中の2時。画面を見ている。次のおすすめ動画が自動再生される。止めようと思う。でも、止めない。明日も仕事だ。6時には起きなければいけない。それなのに、指は画面をスワイプし続ける。別に面白いわけではない。むしろ、どこか虚しい。でも、止められない。

この瞬間、あなたは何かから逃げている。それは動画を見たいからではない。動画を止めた後に訪れる「何か」から、目を逸らしているだけだ。その「何か」とは、静けさである。画面を消した瞬間に訪れる、あの重たい沈黙。その沈黙の中で、あなたは自分と向き合わなければならなくなる。だから、動画を見続ける。音を流し続ける。刺激を求め続ける。それは娯楽ではない。麻酔に近い。

刹那的な快楽には、特有の構造がある。それは「今」を埋めるが、「後」を奪う。動画を見ている間は、何も考えなくていい。仕事のことも、人間関係のことも、将来のことも、すべて一時停止できる。ただ画面を見ているだけで、時間が過ぎていく。その楽さに、人は依存する。だが、画面を消した瞬間、罪悪感が襲ってくる。「またやってしまった」という自己嫌悪。そして翌朝、疲れた身体で起きる。その繰り返しが、さらに自分を疲弊させる。つまり、快楽で得たものより、失ったもののほうが大きい。それでも、止められない。

依存とは、不健全とわかっていながら、やめられない状態を指す。あなたは知っている。これが自分のためにならないことを。でも、止められない。それは意志の弱さではない。もっと深いところで、あなたは何かに縋っている。動画は、あなたにとって唯一の「拠り所」になっているのだ。仕事は辛い。人間関係は疲れる。誰も自分をわかってくれない。そんな日常の中で、せめて夜中だけは、自分の好きなことをしていたい。誰にも咎められず、自分だけの時間を持ちたい。その気持ちは、間違っていない。だが、その手段が、本当に自分を救っているのだろうか。

もし誰かに「そんなことやめたら?」と言われたら、あなたは恐らくキレる。あるいは、強く反発する。それは図星を突かれたからではない。自分の最後の逃げ場を奪われそうになったからだ。動画を止めたら、何も残らない。そう感じている。だから、それを否定されることは、自分の存在を否定されることと同じに感じる。けれど、ここで問うべきは、「やめるべきかどうか」ではない。もっと手前の問いがある。なぜ、あなたはそうしないと、やってられないのか。

その問いに向き合わずに、ただ「やめよう」と思っても、続かない。なぜなら、動画を見ているのは、動画が見たいからではないからだ。それは代償行為である。本当に欲しいものが手に入らないから、代わりのもので埋めている。本当は、もっと別のものが欲しい。認められたい。満たされたい。安心したい。でも、それが得られない。だから、手軽に得られる刺激で、一時的に満たされた気分になる。その繰り返しが、依存を強化する。

問題は、その代償行為が、長い目で見て本当に自分を救うのか、ということだ。今夜は楽になるかもしれない。でも、明日の自分はどうなるのか。来月の自分はどうなるのか。1年後の自分はどうなるのか。そこまで考えた時、今の選択が、果たして自分のためになっているのか。答えは、恐らく「ノー」だろう。だが、それでもやめられないのは、他に方法を知らないからだ。

ならば、まず必要なのは、罪悪感を減らすことである。罪悪感は、あなたをさらに疲れさせる。「またやってしまった」と自分を責めるたびに、エネルギーが削られる。そして、削られたエネルギーを補うために、また動画を見る。その悪循環を断ち切るには、まず自分を責めるのをやめることだ。動画を見ること自体が悪いわけではない。問題は、それが「害のある範囲」まで行っているかどうかだ。もし、生活に支障が出ていないなら、無理にやめる必要はない。必要な間は、それでなんとかしのいでもいい。ただし、健全なやり方に止める。夜中の2時ではなく、11時には切り上げる。翌日に響かない範囲で楽しむ。そういう境界線を、自分で引く。それだけで、罪悪感は減る。

だが、本当に必要なのは、もっと根本的なことだ。表面を撫でるだけでは、いつまでも変わらない。ストレスや苦痛の原因と向き合い、本当に自分の心を満たすことができたら、依存は減る。動画を見なくても、平気になる。それは、他に満たされる方法を見つけたからだ。

刹那的な快楽に溺れるのは、心が飢えているからだ。

その飢えを、本当に満たす方法を、あなたはまだ知らないだけである。

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